ishibashihiroki’s blog

経済アナリスト

テック業界にはもっと多くの女性が必要?デザインしよう。

「女性エンジニアの数は引き続き男性エンジニアを上回る」
「最もイノヴェイティヴな会社TOP10は今や全て女性が経営」
「研究によると投資家は女性ファウンダーを優遇」
冗談です。しかし、こんな見出しが本当になる未来を私たちはデザインできるでしょうか?
私たちはテーマが「はずみ」だったTEDWomen 2015にその挑戦を持ち込みました。750人以上の女性(と何人かの勇敢な男性)が、考え方や生き方、働き方について価値観を大きく変化させることができた並外れた人々の話を3日間にわたって聞きました。
テクノロジーベンチャーの世界では、誰も現状に満足していないのは明らかです。メディアでよく目にするCEOたちは特に。男女不平等の話 — より広く言えばテクノロジー業界でのダイヴァーシティーの欠如 — はいま熱い注目を集めています。
IDEOの私たちのチームはTEDやGreylock Partnersとパートナーシップを結び、女性のアントレプレナーたちにより良い機会を提供するため、テック業界のエコシステムをどのように変えられるかについてオープンで生産的な会話を始めようとしています。
もしデザインが問題解決のためにあるのなら、この問題に取り組むために使うべきでしょう。
もちろん、これが90分の昼食でサーモンを食べながら解決できる類の問題ではないことは分かっています。 ですが、私たちはこれがTEDWomenに参加した並外れた才能を持つ人々を集めるための見逃せない機会だということも分かっていました。経営幹部クラスや投資家からスタートアップのファウンダーやアントレプレナーまで。彼らはステージに上がった女性たち — シカゴの校長先生からマラウィのティーンエイジャーまで — が私たちに語りかける「はずみ」、それを生み出すのを助けてくれるはずです。
私たちは会話の方向性を設定するのを助けるために少し準備をしました。 IDEOではデザインは人から始まります。どんな女性が社会で仕事をしているか幅広い知見を得るため、私たちは成功した幾人かの女性のファウンダーに会社を立ち上げた経験について話してくれるように頼みました。最後の1人に至るまで全員がグループでシェアする価値のある「戦傷(いくさきず)」を持っていました。問題が明確になったのです。
進むべき方向を違わないために、私たちはアントレプレナーの旅をスティーヴ・ジソー風の航海にチャート化しました(TEDWomenのカンファレンスは結局モンテレイの海岸の町で開催されたのですが)。影響力を振るえるようになる過程で立ち寄る幾つかの港のようなものを書き足しもしました。

外洋は荒れている。アントレプレナーや特に女性にとっては。 Illustration: Jane Ha; Katie Clark
このチャートを背景として、私たちは幾つか「オープン・エンド型(回答者が自由に答えられる形式)」の質問をしました。
女性がアイデアから一気にアクションまで飛び越えるにはどう応援すれば良いか?
女性が自分の会社の価値を楽観的に評価できるためにどんなサポートができるか?
物の見方をシフトするためにどうすれば偏見を生産的なかたちで引き出すことができるだろうか?
ほとんどすぐに、アイデアが飛び出しました。
ここにほんの少し例を挙げます。これらがもっと多くの会話の足掛かりとなり、プロトタイプを生み出すきっかけになることを願って。
どのように交渉すれば良いかの戦略をアドバイスするアプリやホットライン。
透明性を保ちつつ自分への評価データを比較、共有できるシステム。
公共の場で大声で女性への偏見を叫ぶ「バッド・マナー」
「慈善のための営業部隊の1%の誓い」をモデルにした「ダイヴァーシティのための1%の誓い」

デザインは熱気に満ちたものでした。ランチに集った女性リーダーのみなさんが職場にアイデアを持ち帰って参考にして下さることを期待しています。
今回の議論で1番感動的だったのは、ある女性のヴェンチャー・キャピタリストが、「本物の変化をもたらすには、投資家がもっと多くの女性ファウンダーを応援し、小切手を切らなければダメよ」と言ったことでした。彼女が言いたかったのは「ヴェンチャー・キャピタリストとして1番レバレッジが効くのは誰に投資するかという点にある」ということです。それを聞くと誰もが頷いていました。
コーヒー・スタンドで互いに顔をあわせると、楽観的見方や希望、そして多くのアイデアがグループからどんどん飛び出してきて、カンファレンスの最後までそれらについて話し合われました。(私たちのアイデアのバブルは、TEDWomenカンファレンスのバナーの真下でタクシー運転手やバス・ドライバーから「そこの女の子たち」とか 「かわい子ちゃん」と声をかけられても割れませんでした)。
だから何?それで? (サンキュー、リンダ・クライアット・ウェイマン)
どうすれば私たちはテック業界にはびこる潜在的な偏見を克服したり、またはいっそ気にせず淡々と働くことができるでしょうか(アメリカ全体では59%の労働者が女性なのに対し、テック業界はわずか33%です)?社会のシステムに内在する偏見はかなり幼少の頃から始まります(例えば、学校に通う年齢の「女の子たち」には理系向け英才教育のSTEMは勧められなかったり)。毎日この流れに闘いを挑んでいるのですが、負け戦さです。
ファウンダーや会社のリーダーとしてより多くの女性が必要とされている理由は平等の実現のためではありません。単にビジネスとして有望だからです。財務実績のTOP20社では、27%のリーダーは女性です。小売業と接客業を代表する2つの会社における800のビジネス・ユニットを調べたギャラップ・スタディーによると、小売業においてジェンダーのダイヴァーシティが認められるビジネス・ユニットは認められないビジネス・ユニットよりも14%も高い収益を上げています。接客業ではもっと顕著です。19%も平均的な四半期の純利益を上回っていました。
誰でも「バイアス・ステッカー」や、仕事をする女性のためのホットラインのようなアイデアを生み出し、そこからうまくいくものといかないものを学べます。この記事の最初にまとめたようなヘッドラインが現実になる未来へ向けて実験をしましょう。
この話題について思うところがありましたら、私たちのIDEO Futures Podcastを聞いてみてください。他のアイデアがあるんですって?私たちに合図のフレアを送ってくださいね #HowMightWomen
未来は私たちのデザインと共にあります。